トージョウ編

46 きみに、会いにいく

 女の子――コトネちゃんというらしい――から事情を聞いた警察官に、私と男の子――ヒビキくん――も成り行きを説明した。 この海岸でギャラドスが暴れた、という前例はないらしく、詳しい調査を行うことになるそうだ。 ちょっとした散歩のはずがまさかこ…

45 穏やかな海を荒らすもの

 ヨシノシティの海岸は、近所に住む子供たちにとって格好の遊び場だ。私も小さい頃に弟と砂場遊びや貝殻集めをしたことがある。 そんな穏やかな海辺に――どうしてあんなポケモンがいるんだろう?「ぎゃあああああああ!」 大きく口を開けて水を放射してい…

44 おうちにかえろう

 澄み渡った青い空。潮風に乗った花の香り。 ついこの間、ここを旅立ったばかりなのに。なぜだか懐かしさを感じる。 静かな住宅街の一画。私が世界で一番安心できる居場所。そわそわした様子で待つ弟――スズミが、こちらを見上げて指差している。 スズミ…

43 気位高き竜使い

 フスベジムのジムリーダー、イブキさん。竜の里と呼ばれるこの場所で待ち構えている彼女ももちろん、ドラゴンタイプの使い手だ。「ハクリュー、【りゅうのはどう】!」「マソラ、【エアスラッシュ】!」 神秘的で細長い身体から放たれる衝撃波に、風の刃が…

42 時を超えて、生まれる命

 光が消えると、そこにはちょこんとおすわりする白と赤のもふもふなポケモンがいた。「わふっ」 目元は白い体毛に覆われて見えないが、口元は楽しそうにぱかりと開く。それから、私やマソラの回りをぐるぐる走り回りだした。「わふっ、わふふっ」「え、ちょ…

41 わたしのゆめ

 空を飛ばれるのは厄介だな、と飛行能力を持つポケモンとバトルをするたびに思う。 大きな翼を悠々と羽ばたかせ、勢いよく襲いかかってくるプテラを相手に、サクヤは口を開いた。「【バークアウト】!」 物静かな彼らしからぬ騒音が放たれる。巨体がぐらつ…

40 きみのゆめ

 私とナナセくん以外は誰もいないバトルコート。向かい側でボールを構えるナナセくんが口を開く。「貴様には夢があるか」「……?」「僕にはある。――四天王ワタルさんのような、最強のドラゴン使いになることだ」 カントー・ジョウト連合リーグ四天王のワ…

39 竜の隠れ里と、再会

 『フスベシティ』。その街は険しい山々に囲まれており、ジョウト地方で訪れるのが最も困難な場所だと思われる。しかし、ある特定の人物たちには聖地ともいえる街でもあった。 ここは、ジョウトとカントーで一番有名なドラゴン使いが育った街。――竜の里。…

38 不思議な配達員

 チョウジタウンの東。フスベシティへと向かう途中にあるのが『氷の抜け道』と呼ばれる洞窟だ。 その名の通り、中は冷凍庫のように寒く、所々氷が張っている。天然のスケートリンクだ。「は〜、寒いねぇ」「……ぶらっき」 しっかりと防寒具を身につけ、背…

37 厳しい冬を乗り越えて

 吐く息は白く、目の前に広がる光景も寒々しい。「ツキミ、【こうそくいどう】!」「ジュゴン、【オーロラビーム】!」 七色に輝く光がツキミを追いかけてくる。けれども、フィールドを素早く駆けるツキミには追いつかない。「ジュゴンに飛びついて【10ま…

36 新月の騎士

24.05.01 改稿 マソラの炎とは異なる、まばゆい輝き。それと同時に、顔の周りにいたヤミカラスの姿が消えた。「……ぶらぁっき」 静かな声だった。真っ赤な瞳が、私を見下ろしている。そっと肌を撫でたぬくもりは、すぐに消え去ってしまう。「お前…

35 闇に呑まれて

24.05.01 改稿 暗闇の中、走り続ける。夜空を舞う小柄な鳥ポケモンから目を離さない。 ――本当に、突然だった。ポケモンセンターで借りた部屋で休んでいると、その鳥ポケモンは開けた窓から飛び込んできたのだ。ぎゃあぎゃあと騒ぎ立てながら、ま…