幼なじみを枕にして寝て起きたら恋人と入れ替わっていたのですが - 1/5

 頭がずきずきと痛む。それに伴うように足元もふらついて安定しない。
 あ〜……これは、まずいかも。
 とりあえず近くの壁にもたれかかって、深く息をする。だからといって状態が落ち着くわけでもないが、ただ突っ立っているよりはましなはずだ。
 タイミングを見て、持ち歩いている痛み止めを飲みたい。そしてできれば、少しだけでも眠りたい。
「……姫さん?」
 聞き覚えのある声に顔を上げると、華やかなストロベリーブロンドが目に飛び込んでくる。こちらを心配そうに見つめる深緑の瞳に、せいいっぱいの笑みを返した。
「おー……コトリくんだー……やっほー……」
「やっほー、じゃなくて。姫さん、顔色ひどいよ。どこかで休もう?」
 コトリくんに支えられながら、少し歩いた先の休憩スペースに辿り着く。自販機と背もたれのないソファーがあるだけのそこには、私たち以外誰もいなかった。
「コトリくん、お水買ってくれ〜……」
「了解」
 コトリくんは私をソファーに座らせると、自販機で水のペットボトルを購入してくれた。それを受け取って、普段から持ち歩いてる鞄の中から薬の入ったポーチを取り出す。
「お金……」
「いいよ。これぐらい」
「だめだよ……」
「多分、あとで陛下に渡されるから。気にしないで」
 陛下――みづきちゃんなら、確かにそういうことしそうだ。思わず笑うと、コトリくんもへらりと笑い返した。
 薬と水を飲むと、ほんの少しだけ気が抜けた。後はこの眠気を何とかせねば。
「コトリくん、ちょっと膝貸して……」
「いいよ。眠いんでしょ」
「そういう『音』してる……?」
「してるけど、見ればわかる。すっごい眠そうだもの」
「そっか……」
 ゆっくりと横になって、コトリくんの片膝に頭を預ける。一見細身に見えるけれど、思ってたより筋肉質な硬さだった。
「……硬い……」
「硬い男の膝で申し訳ありません、姫。我慢してくださいな」
「……しょうがない、なぁ……」
 とろとろと眠気が襲ってきて、目を開けていられなくなる。おやすみ、と囁く声を最後に意識が途切れてしまった。

P2 漣ジュン
P3 椎名ニキ
P4 羽風薫
P5 ???

→漣ジュン